こんにちはコツコツです。
以前、変形性膝関節症については少しお話しましたが、変形性股関節症についてはまだだったので今回紹介したいと思います。
変形性股関節症
ぱっとみると、変形性膝関節症と区別がつかない病名ですよね。
関節内の軟骨が加齢や何らかの原因ですりへり、骨と骨がぶつかり、炎症が起きることで疼痛を生じる病気です。
膝と股関節、場所が違うということです。どの関節にも軟骨はあるので、変形性関節症はどの関節にも起きる可能性はあります。
最近、変形性股関節症の初期の疼痛の原因は関節唇の損傷によるものとも言われています。
原因
一次性:原因となる疾患が特にない(加齢、体重増加などで)
二次性:何か別の疾患があり、それが原因となっているもの(外傷後、関節リウマチ、感染後、発育性股関節形成不全など)
日本での変形性股関節症の原因は、発育性股関節形成不全 (development dysplasia of hips:DDH)が多いとされていましたが、
最近は、大腿骨寛骨臼インピジメント(Femoroacetabular impingement:FAI)も原因として多いのではと言われています。
DDHとは寛骨臼(おわんの部分)の形成がもともと十分ではないという病態です。
寛骨臼の形成不全があるとある一定の部分に応力が集中し、軟骨の変性が急激に進行し、変形性股関節症に至ると言われています。
これまでは先天性股関節脱臼といわれることが多かっったと思いますが、この先天性股関節脱臼や股関節不安定症などの疾患をもった子供が大人になったときの病名と考えれば理解できるでしょうか。また次の機会に詳しい診断方法などを説明したいと思います。
身体所見
多くの方は荷重時痛を訴えます。荷重時というのは立ち上がりや、歩行時、階段昇降時です。跛行もみられます。
また、可動域制限を来します。股関節の曲がりが悪くなると足の爪を切ったりできなくなります。
診断
診断は身体所見で股関節の可動時痛とレントゲン所見でほとんどできます。
日本では前期、初期、進行期、末期と4段階に病期(stage)分類されています。
前期:関節軟骨が保たれている
初期:軽度の関節裂隙狭小化や骨硬化像がある
進行期:さらに関節軟骨がすり減り(関節裂隙はぎりぎり保たれている)、骨嚢胞が出現する
末期:関節裂隙が消失し、骨頭および寛骨臼(臼蓋)の変形がある
*上図は参考イメージです。
しかし海外ではTönnis分類が多いです。似たような分類なので理解はしやすいと思います。
また股関節機能評価としてJOAスコア(医師による評価)JHEQ(患者による評価)があり、両方併用していることが多いです。
これもまた海外ではあまり用いることがほとんどないです。海外ではHarris hip scoreが主流かと思います。
鑑別診断として大腿骨頭壊死や大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF:Subchondral insufficiency fracture)、急速破壊型股関節症(RDC:Rapidly Destructive Coxopathy)などがあげられます。SIFは外傷によりおきますが背景には骨粗鬆症があると考えられます。RDCは特に疾患をもたない方が1年以内に急速に股関節の変形をきたす病気です。原因が不明であることが多いですが、背景にはSIFや感染症、大腿骨頭壊死なども関与していると考えられています。
治療
保存的治療
膝関節と同じでまずは保存的に治療を目指します。
運動療法や食事療法で体重を落とし、股関節周囲の筋肉を鍛えてもらいます。
また疼痛が強い場合には鎮痛薬(アセトアミノフェン、NSAIDs)や湿布、塗り薬も併用します。
手術治療
関節温存術
若年者に人工関節置換術を行うと耐用年数の関係で、再手術となる可能性が高くなります。なのでできるだけ関節を温存する方針が多いです。
若い年齢で、前期〜初期の変形性股関節症である場合には寛骨臼回転骨切り術が選択されることが多いです。
進行期〜末期の変形性股関節症には、Chiari骨盤骨切り術や大腿骨の外反骨きり術や内反骨切り術が併用されます。
特徴としては、骨きり術なので術後に非荷重期間(約6〜8週)が必要となることがあげられます。また自分の関節を温存できます。
人工股関節置換術
進行期や末期の変形性股関節症で、年齢が60歳以上であれば適応となりますが、施設や個人の背景によっては40歳〜50歳でも行われていると思います。
機械の種類は様々で、セメントレスやセメント併用の人工関節があります。
特徴としては、特にトラブルがなければ術翌日から荷重可能となることです。
耐用年数が20〜30年と言われていますので、機械の破損や摩耗があれば交換(手術)が必要です。
おわりに
いかがでしたか。膝ほどは知られていない疾患かなと思いますが、外来などではわりとみかけますよね。
幅広い内容のテーマですので、これからも少しずつ掘り下げて行けたらと思います。
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