治療薬
コツコツです!
前回骨粗鬆症に関して病態〜治療までをお話ししました。前回と同様に、大まかな内容となっていますのでサラッと見ていただけたらと思います。
治療薬の基本的な考えから入りましょう。骨を作るのに必要な栄養とは何でしょうか。色々あると思いますが、基本的には2つ!
Ca(カルシウム)とVit(ビタミン)Dです。Caは骨を作るために必要不可欠な栄養でありますし、VitDはカルシウムの体内への吸収を助けてくれます!規則正しい生活を送っている方(魚を食事にしっかり取り入れている方)はあまり不足することは無いかと思いますが、、そうで無い方は体内のCaが不足し骨粗鬆症が進行していきます。
軽度の骨粗鬆症(骨折を伴わず、YAM値が70%以下の場合)栄養素を補う薬から治療を開始するといいと思います。
Ca製剤とVitD製剤
二つとも高Ca血症以外は大きな副作用もがなく開始しやすい薬と思います(ですが、添付文書上の副作用には十分ご注意下さい)。
Ca製剤としてはアスパラCaなど、種類は色々あると思います。
VitD製剤は2種類あります。アルファカルシドールとエディロールです。効果としてはエディロールの方が強い印象です。なので単剤ではエディロール、多剤と併用する場合はアルファカルシドールといった使い分けをすることがあります(内服薬には個人差があり、一概には言えませんが)。
最初に書いていますが、高Ca血症に注意が必要です!定期的に採血で確認することが望ましいです。
骨吸収抑制薬
いきなり骨吸収抑制と聞いてもピンと来ない方もいると思います。前回もお話ししましたが、骨は絶えず、骨吸収(骨を分解吸収する)と骨形成(骨を作る)を繰り返しています。骨粗鬆症とは簡単にいうと、骨吸収↑、骨形成↓の状態なので、治療薬としては骨吸収抑制薬、骨形成促進薬になるわけです。
まず骨吸収抑制薬です。
①ビスフォスフォネート(ビス剤)
アレンドロン酸Naとかリセドロン酸Naと呼ばれているものです。週に1回や、月に1回内服する経口薬剤です。広く、一般的に使われている薬と思われます。内服後は30分以上の座位保持が必要です。また頻度は高く無いですが、顎骨壊死と呼ばれる重篤な副作用があるため、歯科治療中の方は使用を控える様に言われることがあります。
②RANKL阻害薬
骨吸収は破骨細胞と呼ばれる細胞の働きによるものです。破骨細胞の分化にRANKLが関わっているため、それを阻害することで骨吸収を抑制します。デノスマブ(プラリア、ランマークなど)という薬になります。ランマークは1ヶ月に1回、プラリアは半年に1回の注射薬剤になります。ビス剤と同様に顎骨壊死の副作用が報告されています。
どちらも骨吸収抑制のため、血中のCaが低下することがあります(骨吸収することで血液中のCaが上昇するため)。なので適宜VitDやCa製剤を併用することがあります。
③SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)
閉経後骨粗鬆症に対して使用する薬剤になります。女性は閉経後骨粗鬆症が急速に進行する方がいます、その場合の第一選択になり得ます。エストロゲンは乳房や子宮に対しても使用してしまうため発癌リスクがありますが、SERMは骨に対してのみ作用すると言われています。ラロキシフェン(エビスタ)という薬になります。1日1回の内服製剤です。副作用に静脈血栓症があります。既往に静脈血栓症がある方は注意が必要です。作用としては骨吸収抑制、骨形成促進になります。
骨形成促進薬
①テリパラチド(PTH製剤)
今の所、骨粗鬆症性の骨折を認める方に、最初に始める薬剤として良いと言われているのがテリパラチドです。骨形成薬のイメージは骨組み(鉄骨)を作るということになります。テリパラチドはPTH製剤=副甲状腺ホルモン製剤ですので、最初からPTH値が高い方、透析中や悪性腫瘍の既往(癌を持っている方)には使用を控えるように言われています。注射製剤で、1日1回製剤のフォルテオと週1回のテリボンがあります。骨形成を促進しますが骨吸収も促進すると言われています。なので高Ca血症に注意が必要です。投与期間は2年間となります(2年間継続して使用することが望まれます)。
②抗スクレロスチンモノクローナル抗体
最新の骨形成促進薬になります。ロモゾズマブ(イベニティ)と呼ばれるものです。1ヶ月に1回、12ヶ月皮下注射(投与期間は1年間)の薬剤です。骨形成促進、骨吸収抑制とを併せ持つ理想的な薬剤です。骨吸収抑制作用があるため、投与すると低Ca血症が増悪することがあります。虚血性心疾患や脳血管障害のある方は注意が必要です(投与できない可能性があります)。
結局何を使ったらいいのか。。
色々わかったけど、何を使ったらいいのでしょうか。もともと持っている病気や開始する年齢などが一人一人違うため、これから始めなさいとはっきりは言いづらいです。飲み薬もあれば注射薬もあります、骨粗鬆症薬の効果は数ヶ月単位でしか出てこないため、継続しやすい薬剤の選択が重要です。
ここからは個人的な意見ですが、、、最初に始めやすいのは経口内服薬であるCa製剤、VitD製剤、ビス剤と思われます。骨折が無く、YAM値が70%以下で気軽に始めたい場合に選択すると良いと思われます。女性で閉経前後の方で、YAM値70%以下であれば、SERMの選択が良いと思います。骨折を伴う骨粗鬆症の場合は積極的に骨形成促進薬(フォルテオ、テリボン、イベニティ)を使用した方が良いと思います。ガイドラインや学会などでこれの使い方がいいよと言われているのは、テリパラチド(骨形成促進)→ビス剤など(骨吸収薬)です。イメージとしてはまず骨組みを作った後にセメントで固めるという感じになります。なので、フォルテやテリボンなど骨形成促進薬を使用した後(1−2年後)には必ずビス剤やRANKL阻害薬(プラリア)を使いましょう。
どの薬でも継続して使用することが重要です、また副作用を投与する側と内服する側でしっかり認識していることが大事だと思います。
おわりに
いかがでしたか?文字が多くて難しい内容かもしれません。骨粗鬆症の薬剤はどんどん新しいものが出てきているため、またお知らせできたらと思います。骨粗鬆症に興味を持ち、治療に至るケースが増えることを期待しています。
こちらから読まれると内容がわかりやすいと思います。
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