こんにちは、コツコツです。
今回は何度か話題にもなっている大腿骨の前捻(femoral anteversion)についてお話ししたいと思います。
前捻とは
前捻とは大腿骨両後顆と大腿骨近位最後部からなる平面に対する頚部軸の角度になります。
一般的に女性は前捻が強い方が多く、男性では前捻が弱いことが多いです。
上に大腿骨の図を示します。(左図:前捻が弱い 右図:前捻が強い)
前捻が強いと外旋<内旋の傾向になり、内股になりやすくなります。
前捻が弱いと外旋>内旋の傾向になり、いわゆるガニ股になりやすくなります。
なぜ前捻を考えなければいけないのか?
なぜ前捻がよく整形外科で話題になるかというと、前捻の強さが手術に関係してくるからです。
特に人工骨頭挿入術(BHA)や人工股関節置換術(THA)の際に前捻の強さを考える必要があります。
手術では、主に以下の2点が重要となります。
1. 患者さんのもとの(健側の)前捻をできるだけ再現する。
上記で述べたように左右で大幅に違う前捻になると、左は内股、右はガニ股のように左右非対称になることがあります。
2. 過度な前捻、後捻は脱臼のリスクになる。
手術の合併症で重要なものの一つに術後脱臼があります。
BHAの場合は骨頭径が大きいため脱臼抵抗性がありますが、THAの場合はもともとより小さい骨頭になるため、
カップ(臼蓋側のインプラント)とステム(大骸骨側のインプラント)の設置角度が非常に重要となります。
この二つをできるだけ満たす角度でインプラントをいれてあげることが重要となります。
ただし脱臼リスクが高い場合にはもともとの前捻を再現できないこともあります。
その他注意点
また、前捻(anteversion)について整形外科医にとって区別しないといけないのはstem anteversionとneck anteversionです。
THAの術後評価をした方はわかると思いますが、stem anteversionはあくまでステムの挿入角度(前捻角度)になります。
健側と比較する場合はneck anteversionをお勧めします。
最近ではneck changeableのインプラントもでてきていることからも、neck anteversionをしっかりと計画、評価する必要があると思います。
おわりに
いかがでしたか。前捻についてはまだまだ伝えきれていないと思いますが、股関節〜大腿部の手術の多い整形外科ではとても重要になります。
しっかりと理解しておきましょう。
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