こんにちは、コツコツです。今回は大腿骨頚部骨折についてお話しします。前回お話しした骨粗鬆症にも関連している骨折です。
受傷機転
高齢者だと、骨粗鬆症に起因した脆弱性骨折であることがほとんどです。骨が脆いため小さいエネルギーで折れてしまいます。よく多いのは転倒して臀部を受傷したとかですかね。
若年者では特に既往(通院している病気、ステロイド使用など)がなければ高エネルギー外傷(高所からの転落、交通事故)で受傷することが多いです。
身体所見
股関節痛を訴えることが多いですが、高齢者や小児ですと膝が痛いという人もいます。そういう方には股関節の内外旋で疼痛がないか確認が必要です。よくPatrick signを見たりもしますよね(股関節屈曲、外旋)。転位(ずれ)の程度にもよりますが、来院時には軽度屈曲、外旋位、短縮が見られることが多いです(教科書によっては身体所見が異なることもありますのでご了承下さい)。足趾の動きは問題ないです、足背動脈もよほどのことがない限り触知可能です。疼痛のため歩行困難となることが多いです、転位が軽度の場合、歩行可能な時もあります。
検査
単純X線(レントゲン検査)でほとんど診断可能です。正面と軸位撮影で十分です。稀に単純X線では診断できず、MRIでT1 low、STIR highで骨折線を確認し診断することもあります。なので股関節痛で歩けない方は一旦入院し精査することも考慮が必要です。骨折型の確認や手術の計画のためにCT検査を取ることがあります。
診断〜分類
整形外科医以外のドクターが単純X線を見た場合、間違うことが多いのが転子部骨折です。骨折している場所が頚部と転子部で違いますし、安静度(ベッド上でどのような体勢でいたらいいか)や手術方法、骨折の治癒過程も異なってきます。
Garden分類
Garden Ⅰ 不完全な骨折線 外反陥入型
Garden Ⅱ 完全な骨折線 転位ほぼなし
Garden Ⅲ 完全な骨折線 内反転位あり 骨の部分接触あり
Garden Ⅳ 完全な骨折線 完全転位 骨の接触なし
教科書によって少しずつ異なることがあります。
治療法
頚部骨折は転位が大きいほど、骨癒合が期待できなくなります。
GardenⅠ、Ⅱであれば骨接合(骨をくっつける手術)をGardenⅢ、Ⅳであれば人工骨頭置換術(金属の骨頭に置き換える手術)を行うことが多いです。ただし若年者(60才以下)の頚部骨折は転位が大きくても骨接合をトライすることがあります。人工骨頭は術後の成績は良いですが、耐用年数が20年程度と言われています。術後20年以上経った場合、再手術が必要になる可能性があるため、若年者は自分の関節を残すことを優先します。
また最近は60才前後の頚部骨折に人工股関節置換術(臼蓋と骨頭両方を金属に置き換える手術)が選択されることも多いです。人工骨頭置換術よりも人工股関節置換術の方が耐用年数が若干長いことと、術後のケアが行いやすいためだと思います。
専門用語になりますが、
人工骨頭置換術 ≒ 人工骨頭挿入術 BHA(Bipolar Hip Arthroplasty)
人工股関節置換術 THA(Total Hip Arthroplasty)
となります。
おわりに
どうでしょうか、頚部骨折に関して何となくご理解いただけたでしょうか。詳しい手術方法などは後日書いていけたらと思います。転子部骨折と同様に頻度の高い骨折ですので理解しておきましょう。