こんにちは。コツコツです。
今回は整形外科医なら誰でも一度は経験する、テンションバンドワイヤリングについてお話ししたいと思います。
テンションバンドワイヤリングとは?
テンションバンドワイヤリングとは、整形外科の骨折の手術でよく使われる固定方法です。
ワイヤーを骨折部に通し固定することで骨折部にかかる引っ張られる力を圧迫力へ変えます。
よく用いられる骨折部位としては
・上腕骨外顆骨折
・肘頭骨折
・膝蓋骨骨折
・足関節内果(外果)骨折
あたりかと思いますが、他にも尺骨茎状突起、上腕骨大結節骨折や大腿骨大転子骨折など色々な骨折に使うことができます。
原理
膝蓋骨骨折を例にするとわかりやすいと思います。
骨折をワイヤリングすると、膝関節を屈曲した際に、テンションサイド(ワイヤー側)は引っ張られる方向に力が働きますが、
骨折側には圧着する方向に力が働きます。
緑色:ワイヤー 赤矢印:テンションの方向
方法
一般的にはC-wireあるいはK-wireと、コイルワイヤー(軟鋼線)を使います。
C-wire、K-wireのサイズはとらえる骨折片の大きさにもよりますが、1.2〜1.8mmあたりをよく使う印象があります。
まずは骨折部を整復して、骨把持鉗子で固定しておき、K-wireを2本挿入します。並行に挿入することが多いと思います。
K-wireの下から0.9〜1.1mmあたりのコイルワイヤーを巻きつけ、表面がバッテン(×印、8字でもいいですが)になるようにします。
圧迫をかけるように、先端をペンチで捻って、5回ぐらい捻って巻いたところで切ります。
K-wireがぬけやすいので先端を曲げるなど工夫が必要です。
コイルワイヤーの先端も皮膚に接触しないように埋没させます。
テンションバンドワイヤリングのイメージ図(膝蓋骨骨折:正面)
おわりに
いかがでしたか。テンションバンドワイヤリングは、最初は難しく感じますが、とても有用な方法なのでぜひ理解して習得していただきたいです。
また慣れていない方は手術手技書を必ず確認するか、指導医にも必ず聞くようにしてください。
なお、固定するワイヤーはK-wire以外にも各メーカーが出している商品もあるのでご確認ください。
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