医学

大腿骨転子部骨折①

はじめに

こんにちは、コツコツです。大腿骨転子部骨折に関する内容を載せたいと思います。一般の方はあまり聞きなれないかもしれませんが、前回お話しした大腿骨頚部骨折と同じくらい、あるいはそれ以上の発生頻度であり、整形外科医はよく遭遇する骨折です。大腿骨転子部骨折と大腿骨頚部骨折は骨折部(場所)が近い(似ている)ため、大腿骨近位部骨折としてまとめて取り扱われていました。大腿骨近位部骨折外側型を大腿骨転子部骨折、大腿骨近位部骨折内側型を大腿骨頚部骨折として呼ばれていましがた、今はあまり使われないように思います。

受傷機転

大腿骨頚部骨折と同様に骨粗鬆症を背景とした、高齢者の低エネルギー外傷がほとんどです。つまり転倒、尻もちですね。最近では大腿骨転子部骨折に脆弱性骨盤骨折(FFP)や胸椎腰椎の圧迫骨折を合併することも多いので、どこが痛いかをしっかり確認し、痛い部位のレントゲンやCT検査までしっかりと行うことが重要です。

若年者や青壮年は高エネルギー外傷での受傷が多いです。交通事故や高所からの転落が多いと思います。

身体所見

股関節痛や鼠径部痛、大腿部痛が多いです。大腿骨頚部骨折よりも痛みが強いことが多く、歩行は困難です。疼痛のため股関節の可動域の診察は困難であることが多く、股関節はほとんど短縮、屈曲、外旋位です。ただし大腿骨転子部頂部骨折の場合は痛みが軽度の場合があり、歩行も可能で、外来受診して発見されるケースがあります。

検査

ほとんどがレントゲン検査(単純X線)で診断可能です。CT検査まで行うと正確な骨折型と術前計画を立てることができます。稀にレントゲン、CT検査で描出できず、MRI検査で診断に至ることもあります(ほとんど転位=ズレがない場合)。特に大腿骨転子部頂部骨折の場合はMRI検査をすると、大腿骨内側皮質まで骨折線がかかっていることがありますので注意が必要です(手術適応の場合があります)。繰り返しになりますが、脆弱性骨盤骨折や胸椎腰椎圧迫骨折の合併症例がありますので、疼痛部位を確認し、大腿骨や股関節以外のレントゲンも撮影を検討する必要があります。

赤線が大腿骨転子部になります

分類

分類に関してはAO分類やEvans分類、中野3DCT分類などがあります。ボリュームがあるので後日載せれたらと思います。どの分類を用いても、安定型骨折なのか不安定型骨折なのかを考え、手術計画を行う必要があります。

治療

大腿骨転子部頂部骨折を除けば、ほとんど全てが手術適応と考えます。全身状態がよく、もともと歩行ができていた方には手術が勧められることがほとんどです。大腿骨転子部骨折は頚部骨折と異なり、海面骨の多い部分で骨折しているため、転位(ズレ)が大きくなければそのままでも骨癒合はしやすいのですが、骨癒合までに2−3ヶ月かかり、その間歩行はできません。骨癒合したけど歩けなくなりました、ということもあり得ます。なので、早期に手術を行い、早期に離床(リハビリ)することが今の主流の考え方になります(と思います)。

ただし全身状態が悪い場合や、もともと歩行できず、車椅子移動であった方は、相談の上保存的治療となることもあります。

転位(ズレ)が大きい場合は術前に直達牽引や介達牽引を行うことがあります。

手術は基本的に観血的骨接合術になります。髄内釘手術が主流ではないでしょうか。髄内釘というのは骨の髄腔に太い金属を差し込み、太いスクリュー1本と、少し細いスクリュー数本で固定する方法です。

よく言われているのは、

安定型大腿骨転子部骨折 → CHS あるいは髄内釘(ガンマネイルタイプ)

不安定型大腿骨転子部骨折 → 髄内釘(ガンマネイルタイプ)

症例によって使い分けが必要ですし、今は手術機械も優れたものが沢山あります。

おわりに

いかがでしたか。大腿骨頚部骨折と似ているところが多いため紛らわしいと思いますが、整形外科医から見ると全く違う骨折です。ご理解に役立つと幸いです。

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