どうもコツコツです。今日はアキレス腱断裂に関する内容をお話ししたいと思います。
多くの方がアキレス腱の場所は知っていると思います。それぐらい有名な腱ですよね。スポーツの前によくストレッチでアキレス腱を伸ばしたりしますよね。
医学的には腓腹筋やヒラメ筋(2つで下腿三頭筋と呼ばれています)が踵骨に停止する腱成分のことを言います。
断裂注意の人!
どのような人が断裂しやすいのでしょうか。好発年齢は30−40歳と言われています。この年齢になると若い時に柔らかい状態だったアキレス腱が硬くなってきます(次第に弾性が失われていきます)。よくスポーツをする方で、毎日ストレッチをしているという方は柔らかいアキレス腱が残っていると思いますが、アキレス腱は加齢に伴いどんどん硬くなっていきます。
糖尿病や高脂血症のある方ではアキレス腱の劣化や黄色腫のために弾性が失われ、断裂しやすいことがあります。
他にもクラビット(ニューキノロン系)などの抗菌薬の使用が、アキレス腱断裂を誘発するという論文も散見されています。
受傷機転
ほとんどが強制背屈位(つま先が上を向くこと)による受傷機転です。多いのは足の踏み出しを強くした時です。バスケットやバドミントンなどで強く踏み込んだ時に多いです。他には運動会のリレーで普段走らない方が、全力で踏み込んだ時や、職員・父兄バレーなどで踏み込んだ時などがよくあるパターンかと思います。
受傷した時には物凄い音がなります。人によっては足をいきなり後方から殴られたような感覚だったと表現することもあるぐらいです。周りの人にも聞こえます。それぐらい人体の中で強靭な構造物になります。
症状
足首を下に下げること(アクセルを踏む動作)が出来なくなります。爪先立ちも出来なくなります。
体重をかけて歩くことは出来ますが、次の一歩を踏み出すことが出来なくなります。
身体所見
アキレス腱部の疼痛と同部位の陥凹を認めます(アキレス腱の断裂部が凹みます)。皮下出血を伴うことが多いです。
有名なのはThompson testです。伏臥位(腹ばい)で横になってもらい、膝を90度に曲げた状態でふくらはぎを強く握るテストです。正常だとアキレス腱の作用で足関節が底屈します(アクセルを踏む動作が出現します)。これはThompson test陰性と評価します。
アキレス腱断裂の場合はふくらはぎを強く握っても足関節の運動が誘発されません。これをThompson test陽性と評価します。
ただし部分断裂の場合はThompson test陰性のことがあります。
検査
身体所見と受傷機転でほとんど診断可能ですが、検査で断裂部位を確認することが重要になります。
一番簡便なのはエコー検査です。エコーをアキレス腱に当てると腱の連続性が消失している部分を描出することが出来ます。ただしエコー検査は実施する技師や医師の技量により画像の描出に差が出るため、正確に診断できないこともあります。MRI検査であればほぼ確実に描出可能と思いますので、しっかりと検査したい場合はMRI検査がオススメです。
治療方針
治療方針ですが、病院や医師によっても方針が異なるかと思います。また患者さんの職業や活動量、既往(通院している病気・治療した病気)を考慮する必要があります。その上で保存的治療と手術治療に関して述べたいと思います。
色々な論文で比較されていると思いますが、最近では保存的治療と手術治療の長期成績には有意差はないと言われています(長期成績です)。
保存的治療
保存的治療はギプス固定や装具固定で治す方法で、手術をしない方法になります。
メリット:手術痕がないこと、手術による創部感染症がない。
デメリット:2−3ヶ月の固定期間、患肢免荷(松葉杖などで体重をかけないようにする)が必要。その後も段階的なリハビリ(荷重訓練)が必要。早期にスポーツ復帰すると再断裂することがある。
高齢の方や職場がデスクワークのみとういう方には保存的治療で良いのかもしれません。
手術治療
手術はアキレス腱縫合術になります(細かくいうと新鮮アキレス腱断裂は縫合術、陳旧性アキレス腱断裂は再建術になります)。
皮膚を切開し、アキレス腱を糸で強固に縫合します。そのため固定期間は保存的治療の半分程度(1ヶ月〜2ヶ月)ですみ、早期の歩行訓練が開始できます(部分荷重から開始することが多いです)。目安としては2ヶ月半〜3ヶ月で小走りできる様になる感じです。完全なスポーツ復帰は術後4−6ヶ月になると思います。
メリット:スポーツや活動性の高い職場に早期に復帰可能(保存的治療に比べて)。
デメリット:手術痕が残る、創部感染のリスクがある。
出来るだけ早く元の活動量、運動量に戻りたいという方には良いかもしれませんが、手術の合併症などでより治療が長引く可能性も考慮する必要があります。
おわりに
いかがでしょうか。アキレス腱断裂はよくある腱断裂ですが、その治療方法は患者さんの背景や希望によって変わります。メリット、デメリットを考え一番良い方法を探す必要があると思います。